2016.07.18不動産オーナーの方へ:法人化のメリットや留意点
”いま賃貸アパートを1件所有していて、空き地にもう1件賃貸アパート建築を予定しているんだけど、このまま個人で不動産賃貸をやったほうがいいんでしょうか?”
”「法人化」という言葉をよく聞きますが、会社をつくることでどんなメリットがあるんですか?”
不動産オーナーの方からのご相談で、よく聞かれるご質問の一つです。
賃貸アパートを経営されているオーナーの方にとって、節税は大きな関心事。
こういったご相談をされた場合によくお話させて頂く「法人化」についてご紹介します。
個人と法人の比較:そもそも、法人化することによって、何が変わるのか?
まず、そもそも「法人化」することによるメリットには下記のようなものがあります。
1.所得に対する税率の違い
そもそも、個人の所得に対する所得税と法人の所得に対する法人税は税率が異なります。
所得税は、超過累進税率。所得が多いほど税率が高くなり、最高税率は45%。
一方、法人税は比例税率。所得が増えても税率は一定です。
(平成28年4月1日以後に開始する事業年度については、23.4%。
中小法人など一定の法人については800万円まで15%の軽減税率。)
そのため、一程度以上の課税所得が発生する場合、
個人にかかる実効税率が法人を上回ってくることになるのです。
私たちも、オーナー様のご相談を受ける際、現在の確定申告書を拝見し、
所得がどの程度あるのか、今後どの程度増える可能性があるのかをお聞きしながら、
法人化することによる税率のメリットを試算しお話しするようにしています。
2.さまざまな節税対策
また、法人は個人に比べて様々な節税手法が存在します。例えば:
①親族への給与:役員報酬により複数親族に所得分散が可能。
これらは給与所得ですので給与所得控除があり、課税所得は減少します。
②親族への退職金:損金算入可能。また死亡退職金の場合、相続税の非課税枠も使えます。
③生命保険:個人事業では最大12万円(平成24年以後契約分)しか所得控除されませんが、
法人は、保険の種類や受取人等の設定のでより多く損金となることがあります。
など。
現在、個人事業者として不動産賃貸業をされているオーナー様は、
このようなメリットも検討されるとよいかもしれません。
不動産オーナーの方にとっての「法人化」とは?
では、不動産オーナーの方にとっての「法人化」とは、どのようなものがあるのでしょうか?
ひとことで「法人化」といっても、いくつかの方式があります。
① 不動産管理方式:
オーナーに代わって管理会社が家賃の集金や入退去の管理を行います。
オーナーは管理会社に管理料(賃貸収入の5~10%)を支払います。
② サブリース方式:
管理会社が賃貸物件を一括借り上げし、入居者に転貸する方式です。
管理会社は、管理料として賃貸収入の一部を差引き、家賃をオーナーに払います。
③ 不動産所有方式:
賃貸物件を管理会社の所有物とする方式です。
家賃収入は管理会社のものとなり、管理会社がオーナーに地代を払います。
(地代の支払にあたっては、「無償返還の届出」の提出により権利金授受が不要となります)
今回は、このうち節税効果が最も高いとされる「③不動産所有方式」についてお話しします。
不動産所有会社とは? そのメリットは? 留意点は?
不動産所有会社とは、その名のとおり「賃貸物件を所有」する会社です。大まかな流れとしては、
1.不動産所有会社を設立(法人の設立)。
※ 相続税対策の観点から、株主は相続人となる方をおすすめします。
2.不動産賃貸物件をオーナー様から不動産所有会社に譲渡
3.不動産所有会社とオーナー様で、「無償返還の届出」を提出
4.不動産賃貸物件からの賃貸収入は、不動産所有会社の収入となる
5.不動産所有会社は、オーナー様に地代を払い、役員に対して役員報酬を支払う
という形になります。
不動産所有会社のメリットとしては、下記のようなものがあります。
メリット1:所得の分散
前述のとおり、賃貸物件の収入は全て法人の収入となります。
そして、法人から給与(役員報酬)としてご家族に分散することで、
それまでオーナー様に集中していた所得を、ご家族に分散する効果が得られます。
メリット2:給与所得控除
上記で受け取った給与は、給与所得となりますので、
給与所得の金額から「給与所得控除」を受けることができます。
メリット3:税率の違い
「法人化」のところでお伝えしたとおり、所得が多くなるほど個人にかかる税率は高くなり、
法人を上回るため、法人の収入とすることで税率の違いによるメリットも享受できます。
メリット4:相続税対策として
オーナー様と法人間で「無償返還の届出提出+地代支払」を行うことにより、
土地の相続税評価額が20%減額することができます。
また、相続人となるご家族に所得を分散することで、将来の相続税資金の確保にもつながります。
一方、不動産所有会社方式を考えられるにあたっては、
下記のような点にもご留意頂けるといいかと思います。
・ 設立・移転コストがかかります
法人の設立費用や、賃貸物件を移転する費用(不動産取得税や登記費用)がかかります。
・ 法人(相続人となる方)に資金がなく不動産の購入代金が払えない場合、
法人に「未払金」、個人に「未収金」が発生します。
未収金はオーナー様の相続財産となり、解消する必要があります(金銭債権の贈与等)。
・ 法人は所得に関係なく税金が発生します
法人税には、赤字であっても必ず払わなければならない税金(均等割)がありますので、
赤字でも税金がかかります。
・ 事務処理コストはあがります
一般的に税理士報酬は個人の確定申告よりも法人のほうが高くなります。
また、社会保険の加入義務があるため事務手続きが増えてしまいます。
このように、様々な観点からメリットや留意点を考える必要がありますが、
一程度の不動産所得があるオーナー様は、まずは「法人化」によるメリットがどの程度あるのか
「法人化」するためのコストはどの程度かかるのか、など考えられてみてもよいかもしれません。
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