相続時精算課税制度・・・選択したほうがよい?しないほうがよい?

 相続時精算課税制度という制度をご存知でしょうか?

 贈与税の制度のひとつで、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の推定相続人である子又は孫に対して、財産を贈与した場合に選択できる制度です。

 2500万円までの贈与財産であれば、贈与時には課税されず、将来相続が発生した時に相続税として課税される(注:下記)ため、比較的多額の贈与を行いたい場合に適しております。

 また、税額が贈与時の価額で計算されるため、将来値上がりが予想される財産の贈与にも適していると考えられます。

 TOTALでも、”この制度を選択して子供に贈与を考えているのだけど、、、”とお客様から
ご相談頂くケースがあります。

 ただし、この制度、一旦選択した場合その贈与者からの贈与については選択を撤回することができない、などいろいろな注意点があり、適用にあたっては注意が必要な、少しやっかいな制度です。

 TOTALでもご相談を受けた場合、お話をお聞きしてみると、「今回は選択しないほうがよいのでは?」と思うケースもあります。よかれと思ってやったことが、逆の結果になってしまう、、ということも。

komatta

 今回は、この「相続時精算課税制度」、選択したほうがよい?選択しないほうがよい?
それぞれのケースについてご紹介します。

 なお、相続時精算課税制度についてお知りになりたい方は、こちら(相続時精算課税制度)
ご覧ください。

選択したほうがよいケース

  1.  まず、選択したほうがよいケースです。
  2.  将来値上がりが考えられる土地や自社株の贈与

   税額が贈与時の評価額で計算されるため、将来値上がりが考えられる土地や自社株式の贈与にも
  使われます。但し、適用した財産は、小規模宅地等の減額の適用がないため、注意も必要です。

  1.  収益物件を早めに次世代に移転したい

   贈与時には課税されず、将来相続が発生した時に相続税として課税される(注:下記)ため、
  早めに次世代に収益も含めて移転したい場合に使われます。

   多額の賃料収入がある収益物件を、早めに次世代に贈与したい、、、
  そういった場合には、相続時精算課税は有利に働くことが多い制度といえます。

選択しないほうがよいケース

  1.  次に、選択しないほうがよいケースです。
将来、もしかしたら値下がりする可能性も?という財産(自社株など)

 相続時精算課税は、贈与時の価額で税額が計算されるため、上でご紹介したように、相続時に値上がりしている場合は、節税効果があるのですが、値下がりしてしまった場合は、まったく逆の結果に。

 例えば、同族会社の自社株。

 会社の跡継ぎに自社株を贈与し承継させるため、多額の贈与を無税でできる相続時精算課税制度を選択されるケースも多くあるのですが、安易な選択はリスクを伴います。

 贈与時に業績がよく株価が高かったのに、その後会社の業績が悪化。相続時には贈与時の価額よりも全く値下がりしてしまった、、、という場合、相続税は、贈与時の業績好調の頃の高い株価で計算されてしまいます。

 自社株の価値はほとんどないのに、その自社株のために多額の相続税が、、、という結果に。

 しかも、もし他に自社株の贈与を受けていない相続人の方がいた場合、その相続人の方の相続税まで高くなってしまいます。
 ”兄貴がもらった会社の株のために、なんで弟の俺まで高い相続税を・・・???”
と、いらぬ「争族」の種を生んでしまうことも。

 このように、将来的に値下がりのリスクがある財産については、慎重な検討が必要です。

小規模宅地の特例を使おうと思っている財産

 相続時精算課税制度を選択して贈与を受けた財産については、相続税の計算にあたって、小規模宅地の特例の適用を受けることができません。

 小規模宅地の特例は、例えば居住用宅地の場合80%の減額、事業用宅地や貸付事業用宅地は50%と大きな節税効果がみこまれる特例です。

 生前に相続時精算課税制度により贈与を受けてしまっていたために、小規模宅地の特例の適用が受けられず、結果的に多くの相続税を払わなければならない結果に、、、ということもあります。

 

 これらの他、相続時精算課税制度を選択して贈与を受けた財産は、物納することができない、など、まだまだ「選択しないほうがよいケース」があります。

 メリットも大きい分、慎重な判断が求められる制度です。選択にあたっては、税理士等の専門家にご相談されることをおすすめします。

 


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